スタッフの採用と教育

歯科衛生士のマネジメントは何故難しいのか

「衛生士さんのマネジメント・・・・・・」、とても難しいですよね。

経営者として発展途上の私がマネジメントを語るのは恥ずかしいという想いが強くあります。また語るほどの実績も資格もありません。
そもそも、私は経営者などになりたくありませんでした。
私がサラリーマンの頃、たまたま経営者と接する機会が多くありました。そこで感じたことは「経営者はボランティア業だ」ということです。利己性の高い社長は儲かっていないか、例え儲かっていても、疑い深く心が病んでいるように見えました。利己的な自分には経営者業なんて、できないし、やりたくないと心底思っていました。ところが何の因果か経営者をさせていただくことになりました。そして今日、尊敬する経営者のイメージ像と自分の愚かな言行のギャップに自己嫌悪に陥りながらも、沢山の方に支えられてなんとかやっています。

と、このような前置きをさせて頂いた上で、大変に偉そうな物言いですみませんが、長年、院長として経営者を務めていながら、「経営者とは何か?」とか「マネジメントとは何か?」というイメージがズレているために、必要のない苦労をしている院長先生をみかけます。

衛生士だけで年商3億円以上になるまで

ホワイトエッセンスに加盟する銀座・新宿・池袋にある3医院の医療法人のデンタルエステ部門で総責任者を努めている女性スタッフがいます。院長自らががんばって、年商3億円以上の医院というのは存在しますが、衛生士が自費のデンタルエステだけで、この数字というのはおそらく他に類が無いと思います。

彼女1人だけでなく、それに続く衛生士の人材がほかにも何人か在籍しています。

なおその医療法人の銀座と新宿・池袋にはそれぞれ院長や治療担当のDrが在籍し、自費治療を担当しています。

そして、ほかのホワイトエッセンスの加盟医院でも、ホワイトエッセンス部門(デンタルエステ部門)のマネジメントができる衛生士が年々増えています。
彼女らは衛生士の部下を複数持ち、トレーニングと売上管理をしています。
彼女らの活躍によって、ホワイトエッセンスによるデンタルエステだけで、年間に数千万円の売上が上がる医院が誕生しています。これはそれぞれの院長とスタッフの努力の賜物ですが、あなたも、デンタルエステのマーケティングと組織作りをマスターすれば、これまでの医院収益に加えて、自費だけで、年商数千万円、あるいは億を超える医院のマネジメントができる衛生士を育て上げることが可能です。

しかし、このような状態になるまではまさしく茨の道でした。
2001年の暮れ、この年に最初のホワイトエッセンスを立ち上げ、しばらくは集客に苦しみましたが、メディアの取材がきっかけとなって、経営は軌道に乗りつつありました。
ある深夜のこと、残業でお腹がすいてコンビニに弁当を買いに出かけたところ、ホワイトエッセンスの衛生士スタッフが2人連れだって、同じコンビニに入ってこようとしていました。2人とも近くで一緒に食事をした帰りのようです。
普通であれば「お疲れ様!」と声をかけるところですが、私は思いがけずコソコソと電柱の陰に隠れてしまいました。その時彼女らに罪悪感を持っている自分に気がついたのです。

「不安」か「不満」の多い職場

ホワイトエッセンスがまだ暇だったときは、不平不満があっても、楽な職場だったのでしょう。スタッフは定着していました。その後、流行れば流行り出すほど、離職率が高まり、遅刻も目立つようになりました。ひっきりなしにお客様が来院されるようになると、私はこれまでの赤字をようやく解消できると張り切っていても、スタッフの気持ちは真逆で、クリーニングのしすぎで腱鞘炎になる、休憩時間が十分に取れない等が、陰で噂され、周り回って私の耳に入ってくるようになりました。
私が当時、彼女らに要求していることは、社会人として当たり前のことばかりだと思っていましたが、私の伝え方が悪い上に、私の日頃の態度にも問題があったのでしょう。それを聞いているときの彼女らの表情は、「不安」か「不満」のいずれかでした。彼女らが職場に満足していないことは理解していましたが、その原因が自分にあるとは認めていませんでした。

「衛生士が主役で輝く職場がホワイトエッセンス!」と喧伝しながら、そんな状態の衛生士は一人もいませんでした。当時、自分の目の前に越えられない巨大な壁が立ちふさがっているようでした。

私にとって、予想外だったことは、歯科衛生士(勤務医の方も含みます)を一般企業の社員と比較した場合に、組織貢献という概念があまりにも欠けているということでした。
彼女らの多くは、組織貢献よりも自己成長を優先します。本来はお客様と組織に貢献した結果、自己成長が得られます。しかし、そうは思っていないようです。組織から給料という投資をしてもらっているにも関わらず、その投資額以上のリターンを組織に還元することが社会人としての義務であるという当たり前の考えさえほとんど持っていません。

多くの衛生士には、ビジネス書を読む習慣がありません。
どの業界でも普遍的に通用する仕事に対する考え方を高めることが重要なのですが、専門業務の知識しか高めようとしません。人は読書をしないと、心の歯周病になるといわれています。自分が可哀そう感で一杯になり、モチベーションが直ぐに落ちます。
上司には完璧さを求め、それが欠けていると、不満を言うか、諦めて惰性で仕事をします。

歯科衛生士がアシスタントや保険業務を行う歯科医院ですら、衛生士のマネジメントは難しいのに、ホワイトエッセンスのような衛生士が自費で収益を上げて行く仕事はその難易度が更に増します。これは相手(衛生士)を変えるのではなく、自分が変わらなければ無理だということを次第に自覚していくようになりました。自己変革、そして衛生士を戦力化する仕組み作りは、マーケティングの仕組み作りの数倍の時間がかかりました。今でも未完成で、永遠に未完成だと思います。

人がコントロールできる人間は唯一自分自身だけ

歯科界の労務管理に関するセミナーや書籍は、「どうやって従業員の意識や行動を変えるか」がほとんどで、「どうやって院長の意識や行動を変えるか」はあまりありません。
前者の方が院長にとって楽だからです。
しかし組織は経営者が先に変わらなければ、従業員は変わりません
人がコントロールできる人間がいるとしたら、唯一自分自身だけです。院長自身が経営者としての考え方を身につけ、自分を変えていくことが大切です。

では、どう変われば良いのかといえば、経営者の関心ベクトルを従業員ではなく、顧客に向けることだと思います。ときどき、従業員満足度向上という名の下で、誕生会をしたり、飲み会をしたり、又は衛生士同士にそれぞれ別の役割を与え競争をさせないようにしたり、売上や点数をつけないようにして、如何にスタッフのモチベーションを落とさないかに四苦八苦している医院があります。そのような院長先生は、「スタッフ満足度を上げれば患者満足度も上がる」といいますが、同時に「ウチのスタッフはあまり患者さんのことを考えていない」「数字意識が低い」「自己評価が高くわがままだ」等とこぼします。

負荷をかけない職場、競争の無い職場で働くスタッフは楽かもしれませんが、院長の大きな愛の庇護のもとでは、自立心が育ちませんから、院長依存度が高い組織から脱却できません。彼女らは転職しても、甘い職場でしか生きていけません。
素直に能力や実績の差を直視したくない人が増えると、モチベーションまで上司に埋めてもらいたくなります。親や教師ですら、やる気が出ない人のモチベーションを上げることができないのに、教育の専門家でない経営者がどうして従業員のやる気を高められるのでしょうか?

経営の目的は、お客様に喜んで頂ける商品やサービスを提供することです。
従業員に喜んでもらうことではありません。
「スタッフに何を与えようか」、「スタッフをどうやって感動させるか」等を考えているのであれば、もっと顧客満足を追求すべきです。

「偉そうに、おまえはそれほど顧客満足度が達成できているのか?」と問われれば、全然できていません。しかしリーダーが顧客満足を最優先して本気でがんばっている姿勢が見えれば、マネジメントテクニックなど駆使しなくても、まともな従業員はついてくると思っていますから、気持ちだけは喪失しないよう気をつけています。

そして、本当にスタッフに満足してもらいたいのであれば、スタッフに何かを与えるのではなく、スタッフが直接お客様から感謝される職場、スタッフが医院に収益貢献できるような仕組みを構築していくべきです。「お客様からの直接感謝」と、「組織に収益貢献」、この2つが揃ってこそ、社会人として自信を持つことができます
あなたがスタッフの立場になったとして、もしこの片方しかできていない、あるいは両方ができていないとしたら、自信を持つことはできないはずです。

経営者の幸福感とは、一緒に働く仲間が、顧客第一で仕事に取り組む姿勢があり、組織への貢献意欲も持ち合わせ、結果を出すために頭をフル回転させている、そういう仲間達と対等なコミュニケーションが楽しめることではないでしょうか。

著者プロフィール

株式会社エイ・アイ・シー(ホワイトエッセンス本部)
代表取締役 坂本 佳昭

日本最大の審美歯科チェーン「ホワイトエッセンス」の創業者。最新刊「院長依存から脱却できる医院組織のつくり方」を始めとし、執筆、取材、講演実績多数。

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